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なよたけ

なよたけ

加藤 道夫

「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页

青空文庫

男7 あの三鈴と云う女はあのようになかなか美しい女ではあるのですが、あれでどうしてどうして、決して風になびかぬ木の下草だと云うもっぱらの噂なのですよ。

男8 (心の動揺を抑え、半ば独白)そう云う女なのですか?……ああ、そうだったのですか……(右へ退場)

女6 (右より。気味が悪いと云うふうに)また二三日前に「ふそう雲」が西の空にあらわれたのですって。……せっかくのお祭だと云うのに。本当に嫌なことを聞かされますわ。

女7 ああ、いや。それでも、中務省の陰陽寮から出たお話だとすれば、きっとまた何か悪いことが起るに違いないわ。物忌を怠れば、皐月と云う月にはきまってわざわいが現れるのですもの。全く、うかうかとお祭騒ぎもしていられませんわ。

女8 あれも確か去年の葵祭の時だったんじゃございません? ほら、あの大原野の社の斎女になられるはずの、何とか云われたお年若な娘御が、昼の日中に突然、神隠しに遭ったじゃありませんか?

女7 そう、そう。私もよく覚えていますわ。

女8 今年も、この分だと、またどなたか今日あたり、神隠しに遭うのではないかしら? おお、こわ。(左へ退場)