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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
左手から右手へ、都の子童が二三人「験者だ! 験者だ! 山籠りの験者がたくさん行くぞ!」などと呼びながら、駆けって行く。左手から右手へ急ぎ足で見物に行く人達がだんだん多くなる。
男10 ああ、そう云えば、大原野の巫女になるはずだったと云う娘が、去年の賀茂の祭の日に突然神隠しに遭ってからと云うものは、あっちにひとり、こっちにひとりと都の童児どもが、五人も六人も行方わからずになって、それっきり一向帰って来ないと云うことを聞いています。あれは大方、それの神よばいなのでしょう。
男9 うむ。……今年も、物忌を怠って、誰ぞまた神隠しにかからなければよいがな。現に西の空の雲気は確かにわざわいのきざしをあらわしているのだ。
人々ががやがやと集って来て、そこら辺に立ち呆けて、右手奥の方を眺めている。験者達の呼ばい声、鈴の音は、次第次第に熱ばんで来る調子。
吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
男10 あの大原野の巫女の嬢子については、誰もつまびらかに顔さえ見たことが無いと云うのに、まあ、縁起のよくない噂話が色々とつきまとっていましたようで、何でも、その家は宇佐の神人の亡び残りだったそうでございます。