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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
清原 (自棄的に)僕はもう嫌になっちゃったんだ! もう僕あ、こんな大それた計画からは手を引きたくなったんだ!……ねえ、そうだろうじゃないか、小野。こんなことをしてたら、今に僕達はどんな眼に遭うと思う?……例えばさ、僕達が石ノ上と一緒になってこんなことをしてるなんてことが大納言様のお怒りに触れて見たまえ。僕達までが石ノ上と同じように大学寮を追っぱらわれてしまうかもしれないんだぜ。……
小野 (じっと清原の顔を凝視め)清原。……貴様、恋が醒めたな?
清原 恋は石ノ上の心にのりうつってしまった。恋の炎は今では石ノ上の心の中に燃えさかっている。僕の恋はしらじらと醒めきってしまった。……小野。僕あ白状する。……僕あなよたけが好きじゃなくなっちゃったんだ!……(顔を伏せる)
間――
小野 (妙に調子を変えて)……清原。……君があの烈しい恋の酩酊から醒めたからって、……別に俺が君に対して何を云うことが出来よう?……かしこ過ぎて、ここ現実の園に戻り来れば、何事もみなはかなき一炊の夢だ。……俺は実は今まで心の中で君を軽蔑していたが、今度は石ノ上を軽蔑しよう。……俺は恋なぞと云う愚劣なものは全く信用しないからな。