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なよたけ
なよたけ
加藤 道夫
「三田文学 四・五月号、六月号、七・八月号、九月号、十・十一月号」1946(昭和21)年5月~10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 81,415 字 · 163 页
葵の物忌は、彼だけはつけていない。
遠のいて行く験者達の呼ばい声の方に何やら吸い寄せられるような眼差を向けて、立っている。
吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
吐菩加美 ほッ 依身多女 ほッ
…………………
…………………
(次第に遠く)
灰色の上下幕が静かに下る。――
第二場(上下幕の前面にて)
行者達の魂ごいの呼ばい声・鈴の音は遠く消え去り、取り残されたように神楽の笛の音が微かにしている。左手より清原ノ秀臣と小野ノ連、話し合いながら登場。中央まで来ると、立止って立話をはじめる。……
小野 む。……それは僕もそう思った。石ノ上の奴、まるでもう、何と云うか、それこそ物の怪にでも取っ憑かれてしまったような有様だ。
清原 それだから、僕は困るんだよ。……ひとりで張切って大納言様の噂をああしてこそこそ都中にふれ廻ってさ、……あれで自分ではうまく行ってるものと思ってるらしいけど、僕あ、僕あ何だか少し恥しくなって来たよ。
小野 恥しい?……おい清原。恥しいと云うのはどう云うわけだい?……情無いことを云うじゃないか?……そりゃ僕はこの計画には局外者だし、親友の誼をもって、蔭ながら君達二人を援助して来ただけだが、……いくらなんでも恥しいとは何だね? それで君、なにかね、石ノ上に対して申訳が立つと思うのかね?