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のらいぬ

のら犬

新美 南吉

「赤い鳥」1932(昭和7)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,431 字 · 7 页

青空文庫

まっ暗い峠を、足さぐりでこすのはあぶないので、茶店のばあさんに、ちょうちんをかりていこうと思いました。

おばあさんは、ふろをたいていました。ちょうちんだけかりるのも、へんなので、常念坊は、

「おい、おばあさん。だんごは、もうないかな。」

とききました。

「たった五くしのこっていますが。」

「それでいい。つつんでおくれ。」

「はいはい。」

と、おばあさんは、だんごを竹の皮につつみます。

「すまないが、わしに、ちょうちんをかしておくれんか。あした、正観にもってこさせるでな。」

「とても、やぶれぢょうちんでござんすよ。」

「いいとも。」

おばあさんは、だんごをわたすと、上へあがって、古ちょうちんのほこりをふきふき、もってきました。常念坊は、ちょうちんにあかりをつけると、あたりを見て、

「おや、もう、どっかへいったな。」

と、ひとりごとをいいました。

「おつれさまですかね。」

「いんにゃ。どこかの犬が、のこのこついてきて、はなれなかったんだよ。」

「きつねじゃありませんか。あなたの通っていらっしゃった、あのさきのやぶのところに、よくきつねが出て、人をばかすといいますよ。」

「おもしろくもないことを、いいなさんな。