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のらいぬ

のら犬

新美 南吉

「赤い鳥」1932(昭和7)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,431 字 · 7 页

青空文庫

「おや。きつねがなにか、くわえていますよ。」

「ああ、だんごだ。とりあげろよ。」

「はい。下へおけ。――だんごは、とりかえしましたが、きつねはすわったきり、にげません。」

「だから、ほうきで追っぱらえというのに。」

「ちきしょう。にげんか。しっ、しっ、しっ。」

と、正観はほうきで追いまくりました。

「ほうい、ちきしょう。こらっ。」

と正観は、そっちこっち追いかけて、とうとう外へにがしてしまいました。

「にげたか。」

「にげました。」

「正観。」

「はい。」

「なんでおまえは、今ごろ鐘楼なんぞへ、あがっていたのだ。」

「さびしかったから。」

「鐘楼へあがってれば、さびしくなくなるのか。」

「鐘をゲンコツでたたくと、おん、おん、おんと、和尚さんの声みたいな音がするんです。」

「なにをいいおる。」

和尚さんは、ころもをぬいで、ろばたで、おぜんにすわって、ざぶざぶと、お茶づけをながしこみはじめました。正観は、おみやげのだんごを、ひろげました。

「和尚さん。あの犬は、どこからついてきたのです。」

「となり村から、しつっこく、あとをつけてきたのだよ。」

「どうして。」

「どうしてだか、知らないよ。