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はたしじょう

はたし状

山本 周五郎

「週刊朝日 新年増刊」朝日新聞社、1951(昭和26)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,525 字 · 39 页

青空文庫

それが英之助だけは違うのである。えこひいきして美味い物を遣るとか、特に大事に扱うというのではなく、彼には一目置くという感じだった。軍兵衛夫妻から兄妹たち、――みよを例外にして、――みんなの言葉つきがまず違っていた。

末っ子のみよは気の勝った娘だった。まだ舌のよくまわらないうちから人をやりこめたり、あら捜しをしたり、悪口を云うのが得意であった。

――だいたんぼたもち、ぼたもち。

第二が一人っ子であまやかされているということでも聞いたのだろう、突然そんなことを云いだして、ついに「牡丹餅」という綽名が付いたのもみよのおかげである。そしてみよは和田における唯一人の、英之助の敵であった。

――ふいちまたんはいしどうよ。

これが第一声であった。黙っておっとり構えているから、幼い眼には石燈籠と感じたのであろう。ついで「おじいたん」「だちどころ」当時もこのだちどころは意味不明だったし、今でもついにわからない、みんながよく反問したが、

――だちどころはだちどころよ。

つんと鼻を反らせて解釈を与えなかった。その後もじじむさいとか百人並とか、――これは容貌のことであるが、――いろいろ悪口をいい、両親や兄たちや姉などに叱られても平気だった。