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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和35)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,391 字 · 44 页
敏夫は妙な微笑いをうかべながら云った、「もういちど云いますが、おふくろのことはぼくに任せてもらいます、木内さんの話しではまにあうだろうというので電報を打ったんですが、まにあわないとわかれば知らせるつもりもなかったんですよ」
「どういうことなの、それは」と姉が吃驚したような声で訊き返した、「おまえまさか、あたしたちに死顔も見せないっていうつもりじゃあないだろうね」
「まあいいから姉さん」と啓三が手を振った、「とにかく云うだけ云わせなさいよ」
「サンキュー、啓さん、だがもう云うことはないんだ」と敏夫は云った、「あなた方はみんないそがしいんだし、こっちはこんな始末で接待もできない、失礼だけれどぼくとしては帰ってもらいたいんですがね」
「ちょっと待てよ」と啓三が遮ぎった、「おどろかすのもほどほどにしてくれ、いくらなんでもそんな乱暴なはなしはないぜ、なるほど君は十何年も二人っきりでくらしたろうけれど、おふくろは君だけのもんじゃない、おれたちにとっても実の母親だぜ」
「だからちゃんと知らせたじゃあありませんか」
「じゃあ訊くがね、まにあわないとわかってたら知らせないつもりだった、というのはどういう理屈だい」