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ばちあたり
ばちあたり
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1960(昭和35)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,391 字 · 44 页
「ぼくはまじめですよ」敏夫はまた梅酒を呷った、「生れてこのかた、いまぐらいまじめにものを云ったことはありません、ぼくはだめなんだ、いいですか、かあさんが生きていてくれてさえ、ぼくはなっちゃない野郎だった、なにをやってもしくじるばかり、かあさんにしりぬぐいをしてもらって、こんどこそはと思ってやる事がまたおしゃか」
彼は続けさまに二杯呷り、ぐらっと頭を垂れて、それから喉で忍び笑いをした。
「室町は大資産家、五番町は大病院の内科部長、啓さんは一時間が何十万円にもつくという、――何万円でしたかね、失礼、――その中で残りっかすのぼく一人ぐらい、どうなったっていいでしょう、姉さん、あんたにはぼくが甘ったれにみえるかもしれませんがね、これでも自分にできるだけのことはやってきたんですよ、かあさんはそれを知っていてくれた、隣りでいまかあさんは聞いていてくれるでしょう、ぼくは自分にできる限りのことをやってきた、することなすことおしゃかになっちゃったけれど、自分では精いっぱい、いま思うとおかしいくらいしんけんにやってきたんですよ」
「そろそろ弁解になってきたようだな」と啓三が云った、「そのへんで切上げにしようじゃないか」