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ひとでなし

ひとでなし

山本 周五郎

「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页

青空文庫

「すみは手も早えが端唄もうめえ」と大きいほうの男が云った。ぶっきらぼうな、苛いらしたような口ぶりだった、「まるっきりでもねえが、端唄をうたってるときのすみのやつは人間が変ったようになる、おらあすみのうたうのを聞くのが好きだ」

痩せた男が喉で笑った。人をこばかにするというよりも、可笑しくてたまらないといったふうな笑いかたであった。

「あいつの端唄には泣かされるぜ」

「どうして笑うんだ」と大きいほうの男が云った。唇が片方へ曲り、眼の奥で火がちかちかするようにみえた、「すみの端唄のどこが可笑しいんだ」

「おちつけよ、人が立つぜ」と痩せた男が云った。彼はその伴れのほうへは眼も向けず、しゃがんだまま、地面から小石を五つ拾い、それを片手で握って振っては、ぱらっと地面に投げ、また拾い集めて、握って振っては投げる、という動作をくり返していた。

大きいほうの男はそれを横眼に睨んでいて、それから立ちあがり、着物の裾を手ではたいた。痩せた男はぐいと顔をそむけた。砂埃でもよけるような、神経質な身ぶりであった。

「おい」と痩せた男が云った、「もういいじ