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ひとでなし
ひとでなし
山本 周五郎
「講談倶楽部」1958(昭和33)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,484 字 · 38 页
んです」
康二郎はなにも云わなかった。
「ぶちまけて云いますが、あっしは野郎といっしょに牢ぬけをした吉次という者です」と男は続けた、「すみというなかまの者としめし合せて石川島をぬけ、入墨者を二人水に沈めたうえ、腐るのを待って海へ放した、それが品川の浜へあがってあっしたち二人ということになったんだが、それから三年、野郎もあっしも悪いことをし尽しました、どうにも江戸にいられなくなって、上方へずらかろうということになったんです」
「あの男が、――力造が」と康二郎はかすれた声で訊き返した、「本当に生きている、っていうんですか」
「この吉次が野郎の相棒です」と男は云った、「男二人ではお上の眼が危ない、おようさんを伴れだして、野郎が夫婦者になってゆけば関役人の眼もごまかせるだろう、そういうわけで、あっしが伴れだし役になったんです」
康二郎は唾をのんだ。そして、なにか云おうとしたが、吉次という男のほうが続けて、ところが津ノ正の名が出た、と云った。あの人が津ノ正へはいると聞いて欲をだし、あの人を伴れだすばかりでなく、あの人を枷にして津ノ正から金をゆする