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ひどいけむり
ひどい煙
久生 十蘭
「オール讀物」1955(昭和30)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,064 字 · 18 页
「手前のことは、ともかくとして、伜めに難題をいいかけることは、平に、ごめんねがいとうござる」
「ふむ、それが一夢斎の伜の言い草か。よしよし、貴様は相手にならぬ。なんというか、喜三郎に聞いてみよう」
砲座になる土壇の切り取りをしている同心どもの居るほうへ向って、
「半十郎、喜三郎」
と呼びかけると、半十郎と喜三郎が、野袴の裾をひるがえしながら、こちらへ走り寄ってきた。
半十郎は大筒役組下同心、喜三郎は玉薬奉行属役、どちらも焼火の間詰で、同年の二十五歳である。
「喜三郎、貴様は鳥居甚左衛門について自得流の棒火矢(擲弾筒)の法を学んだそうな」
「御意にございます」
「棒火矢の抱え打方は、天砲の天頂打ちとおなじ理合であろう。明日、天砲の試し射ちをしてみるがいい。半十郎もやる。カロンが平戸から連れてきたウールフとかいう砲手は、おのれの名もかけぬような文盲で、数理究理に関することは、なにひとつ知らぬが、六貫七百二十匁の玉を、わずか七百匁の火薬で、四町先へ飛ばせるといっている。偽りなら、それでよし。いうとおりのことをやってのけたら、貴様もやれ。カロンの天砲の装薬の定め方は、玉目百匁について、火薬十匁の割と知れた。