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ひどいけむり

ひどい煙

久生 十蘭

「オール讀物」1955(昭和30)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,064 字 · 18 页

青空文庫

子の喜三郎直之を督励して、砲術と大砲張立の技を練磨させることで、ひそかに鬱屈をいやしていた。

陽がのぼるにつれて、暑気が強くなった。野面いちめんに草いきれがたち、蒸風呂のなかにでもいるようで、腹背から、ひとりでに汗が流れ走る。

地取りが終ると、磨組の同心は大工どもを急がせて、試射の標的になる小屋の建前にかかった。オランダ商館長のカロンの仕様には、間口十二間、奥行十五間の地面に、相向いに五軒の小屋を建て並べ、そこから四町ほど離れたところに、大臼砲を据える土壇をつくるように指示されているが、オランダの東印度会社がお上に献上しようという臼砲なるものは、いかにもひとを馬鹿にした代物で、図体こそは厖大だが、玉割(実質弾の直径と口径の比率)も出合(照準線と軸線とが交叉する一点にたいする砲口からの長さ)もあったものではなく、竹筒でも事はすむ狼火の打揚筒を、桁はずれに大きくしたというものにすぎない。

それは、まったくもって、厖大なものであった。

軽子、曳方が三百人もかかって、箱根の石高道をひきおろし、神田誓願寺前の松浦侯の上邸におさまったところを拝見に出かけたが、臼砲の口径は一尺二寸、砲身の長さは十五尺もあるという、思いもかけぬ大物だったので、みなみな、「これは」