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むかでのあしおと

むかでの跫音

大倉 燁子

「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页

青空文庫

を見聞きしていたので、よくも知らない私までが、何となく快からず思うようになっていた。

「お住寺さんを死なしたのは天光教だ」

「天光教なんかに足を踏み入れなければ、こんな不名誉な事にはならなかったろうに――」

「否え、踏み入れたんじゃない。引き摺り込まれたのさ」

「魔術を使うんだって話だから、本当は自殺だか何だか、まあ謎でしょう」

こうした蔭口を、時には故意と聞えよがしに云うのを耳にしながら、平然として告別式に列席し、納骨式に拍手を拍って祝詞を捧げる彼だ。伯父の死も謎かも知れないが、私の目の前にいる彼もまた謎の人のように思われる。

私はいずまいを正して、挨拶しようとすると彼の方から先にお辞儀をして、にこにこしながら言葉をかけた。

「お疲労でしょう」

たった一言だが、その語調にはいかにも私の立場をよく呑み込んでいて、深い同情を持っているというような、優しさが籠っているのを嬉しく思った。よく見るとその表情にも態度にもどこやら心の好さそうな処も窺われるので、私の彼に対する感情はすっかり和らいだ。

彼は読みかけていた新聞を広げたまま膝の上に置いた。何気なく見ると、それは、四五日前の地方新聞で、伯父の記事が大袈裟にでかでかと書かれてあった。