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むかでのあしおと
むかでの跫音
大倉 燁子
「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页
「飄然、姿を消した新生寺住職、天光教の奥書院にて割腹す」
私はそれを横眼で読んだ。
新生寺住職ともあろうものが、謂わば商売敵も同然な天光教へ行って死んだ、というのが問題になっているらしいのだ。本堂で自殺したのなら、大目に見てくれたのだろうが何分にも死場所が悪るかった。
「数珠を瓜繰る手を株に染めて失敗し、百万円の借金を負い始末に困って自殺した」
と新聞は報導しているのだ。
「新生寺さんは、あなたの伯父様に当られるのですか」
突然彼が口を切った。この人の事を皆が先生と称んでいたから、私も先生とよぶことにする。
「いいえ。亡夫の伯父なのでございます」
「突然のことで――、嘸ぞ吃驚なすったでしょうな」
「平常余り音信もいたして居ませんでしたので――」
「しかし、新生寺さんは東京の親類が親類がと、よくご主人やあなたの噂をしていられましたよ」
私はちょっと恐縮した。
「病気で亡くなったのでしたら仕方もございませんが――。殊にああした死方をしましたものですから、世間様へも申訳ないし、と申して親類の者達も困って居ます。何分にも一山を預かる身で――」
「自殺してはならぬと教えるはずの人が自殺したんですから、ちと困りますね」