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もくねじ

もくねじ

海野 十三

「譚海」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页

青空文庫

悲しみの中にも、ぼくはまだ少しばかりの希望を抱いていた。

それは誰かがぼくの傍を通りかかって、ぼくが転がっていることに気がつくのだ。おや、こんなところにねじが落ちている。一体どこのねじが抜けたんだろうといって、その人が親切に、ぼくの入るべき元の穴を探してくれれば、ぼくはたいへん幸福になれるのであった。どうか、誰か技師さん、ぼくを見つけてくれませんか。

しかし実際は、ぼくを見付けてくれる人間は一人もいなかったのである。運のわるいときには悪いことが重なるもので、それから三十分ばかり経った後のこと、技師の一人がこつこつと靴音を響かせて、ぼくの転っている方へ歩いて来たが、その靴先がぼくの身体に当って、ぼくはぽーんと蹴とばされてしまった。

なにしろ軽い身体のぼくのことであるから、たちまち床をごろごろと転った末、部屋の隅にあった木箱の壊れがつみあげてあるその下へもぐり込んでしまった。ああ、もう観念の外はない。再びあのりっぱな機械の穴へは戻れないことになってしまった。

流転

それから先の話は、あまりしたくない。

ぼくは二十日、壊れた木箱の下にいた。

やがて工事場の取片づけが始まって、木箱は部屋から外へ搬ばれていった。