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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
なんの因果で河童路地を夜逃げせんならん?」と、相変らず河童路地に居据って、雨の日も梶棒ははなさなかった。
半年経つと、安治川での仕事が一段落ついたので、鶴富組の主人は新しく△△沖の沈没船引揚事業に眼をつけた。そして、新婚早々大阪を離れるのはいやだろうがと、次郎に現場への出張をたのむと、君枝との結婚の際親代りになって貰った手前もあって、当然よろこんで行くべきところを、次郎は渋った。
「あそこはたしか三十三尋はありましたね。今までなら、身寄りの者はなし、喜んで潜ったんですが、どうも女房を貰うと三十三尋ときくと、ちょっと……。」
「そりゃ、なるほど危険なことは危険だが、それだけにまた、これまでどの解体業者もこいつには手を出せなかったんだが、しかし、君、説教するようだけど、もう今じゃ、引揚事業って奴はただの金儲けじゃないんだから。女房も可愛いだろうが、そこをひとつ……。」
「女房だけじゃ良いんですが、祖父さんのことを考えると、うっかり……。そりゃ、祖父さんは僕が死んでも立派にやって行ってくれるでしょうけど、しかし、祖父さんはこれまでに一度婿を死なしていますから……。