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わがせいしんのしゅうい

わが精神の周囲

坂口 安吾

「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页

青空文庫

この少年大工は全力で働いても一ヶ月七万か八万円の材木しかこなせない。七万八万は多すぎるので、二万三万ずつ頼んでおくと、いつか自然に家が建ち、塀がつくられ、門まで出来てしまうそうだ。

この話を尾崎士郎にきかせると、空想部落の作者は、この現実の奇蹟に驚嘆して舌をまいた。

「その真鍋君という人は偉いねえ。それは、檀一雄には、家ぐらい建つだろうよ。オレは真鍋君なんて、名前も知らなかったからね。栄養失調になってね。フーム。温泉につかって小説の書ける身分じゃないから、絶対に自分の書斎が必要である。なるほど、そうだ」

彼の感動に誇張はなかったのである。

「その部落へボクも一枚入れてくれないかね。六七十坪でタクサンだよ。二間あれば、いゝんだ」

檀一雄の家も二間。真鍋呉夫の家も二間。私の家の設計も二間。尾崎士郎も二間ときては、この部落には二間以上の家はない。その代り、私の家にはテニスコートをつくり、檀一雄は二十五米のプールをつくる。プールの横へ二間の家を造って、檀君がそッちへ移ると、今まで檀君のいたところへ真鍋君が移り、真鍋君の家のあとへは長畑さんが越してくることになっていた。