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わがせいしんのしゅうい
わが精神の周囲
「群像 第四巻第一〇号」1949(昭和24)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,670 字 · 32 页
この負傷のために今もって歩行に難渋であるが、この時は催眠薬中毒のせいではなくて、未知の海へとびこんだための失敗だった。
夕凪ぎになるとヨットも動かなくなり、ナメクジの海上歩行で辛くも辿りつく勇士もあるし、商船学校の豪傑は宇佐美の奥へ白帆の姿が消え去るほど流されて、救助艇がでた始末である。同乗の檀一雄は豪傑が風と闘う苦心を知らず、救助艇に向って、
「あなた、なして助けに来たですか」
と食ってかゝったそうである。
この時刻になると、伊東の海にはイワシ船が勢ぞろいをし、見張り船に誘導されて、所定の位置へ走るもの、待機のもの、明治初年の海戦を見るようである。ランチに乗って、私たちも見物にでかけた。イワシ網をしめてくると、これを狙って大型の魚があつまる。これを擬似バリで釣りあげる。豪快なものである。
いちじるしい不眠症をのぞいては、私は益々健康児らしく、ふとる一方のようである。
今もって私に分らないのは、伊東へ出発の前夜、南雲さんと長畑さんがなぜ来合わせていたか、八木岡君と原田君が、なぜ泊っていたか、いったい私は何をしたか、ということであった。
私は、大井広介が陽子ちゃんを迎えに来て帰った翌日からの記憶がない。