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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
渡辺温『アンドロギュノスの裔』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アンドロギュノスの裔、可哀相な姉、或る母の話、父を失う話、花嫁の訂正、イワンとイワンの兄、恋、勝敗、少女、シルクハット、嘘、象牙の牌、兵隊の死、ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった、遺書に就て、赤い煙突、風船美人、四月馬鹿、十年後の映画界、浪漫趣味者として。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 页
ところが翌日になって、果してそれ等の指紋は小野と、美代子とに付合することが判明したのである。
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『――まことに恐れ入りました。ピストルを小野さんの手に持たせましたのは如何にもわたくしでございます。けれども何と仰せられましても、自分で射ち殺した覚えなぞは毛頭ございません。今度こそ本当のことを悉皆申し上げてしまいます。――致し方もございません。
『一昨日の晩、葛飾は、泣いて詫びるわたくしをまるで突き倒すようにして外へ飛び出して行きました。わたくしはあんな淋しい家の中にたった一人取り残されて、いよいよ心細くなったので、それから間もなく寝床へ這入ってしまいました。それで小野さんが戻りました時にも、未だ漸く十時をちょっと廻ったばかりだったのですが、どうせひどく酔っているのに違いないと思いましたし、わたくしは声をかけなかったのでございます。そして恰度十一時が――葛飾の居間に掛っている寺院の鐘のような工合に響く時計が十一時を鳴り終って直ぐ、画室の方でゴトンと何か重い物の倒れた音がしました。わたくしは小野さんが画架でも顛覆したのだろうと考えて、別に気にも留めませんでした。