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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
渡辺温『アンドロギュノスの裔』。同一底本的分册已合并为一书。收入:アンドロギュノスの裔、可哀相な姉、或る母の話、父を失う話、花嫁の訂正、イワンとイワンの兄、恋、勝敗、少女、シルクハット、嘘、象牙の牌、兵隊の死、ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった、遺書に就て、赤い煙突、風船美人、四月馬鹿、十年後の映画界、浪漫趣味者として。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,168 字 · 267 页
今度こそ見逃すものか!」
私も遉にギクリとした。
――いましたか※(疑問符感嘆符、1-8-77) ほんとうですか? 何処にいました?」
ミハエルは感動のあまり、我を忘れて籠から半ば体を乗り出した。私はおどろいて、それを抱き止めた。
――おお、地上の宝よ! 私の生命よ!」ミハエルは叫ぶのである。
――どれどれ! 何処にいるのですか? 私にも見せて下さい。」と私は云った。
ミハエルは漸く私に双眼鏡を手渡しながら早口に説明した。
――すぐ下です。博覧会の真中です。大きな赤い旗と緑色の天幕との間にある象の形をした建物の前です。印袢天を着た男達の中にたった一人まじっている女がそうです。……わかりましたか?」
私は彼の云うが儘に焦点を定めた。すると果して一人の美しい女の顔を発見することが出来た。だが、よくよく見るならば、ああ! 私はそこで危く双眼鏡を取り落とすところであった。
何故と云って――私の見出したところのその美しいミハエルの恋人たるや、何と今しも印袢天を着た会場整理の人足共に依って擔ぎ出された、何処か呉服屋でも出品したらしい飾り付け人形であったではないか!