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オペラのつじ
オペラの辻
岡本 かの子
「婦人サロン」1932(昭和7)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,858 字 · 8 页
いわば情痴と同じなげきからだ。
私のことを何から何まで呑み込んでいられ学校の休学を与えて呉れられた子どもの師匠は笑い乍らいわれた。
「だが、帰りにうまく連れて来られるかな。子供の方で残るなんていったら骨ですぞ」
この言葉の意味は子どもが英国へ巴里を讃美し巴里に愛着をふかめる表現の手紙を呉れる度だんだん私にはっきり分って来た。
「一人で辛いことなかった。太郎さん」
小さい声で私はいった。すると子どもはその手を振り切って父にも聞えるような声で、
「ちっとも――いいや普通だった」と答えた。この子どもはこの子の父親のように感情を現わすのを嫌味とするような肌合のところがあった。
「だけど、おかあさんなんかしつっこい人だもの、僕にいつでもくっついているような気してたもの」
この子どもはまた愛するものをむごくいいすてるくせがあった。
私は洋服も帽子もすっかり巴里風になった子どもを見上げ見下ろした。つい一年ばかり前日本に居た時の美術学校の制服姿が眼に浮ぶ。私の子に対する情痴の結果が子をこんなにも変らせたのか。好いことか悪いことかはそれは知らない。だがもうあの美校姿におそらくこの子は帰ろうとしないだろう。