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カストリしゃじけん

カストリ社事件

坂口 安吾

「別冊オール読物」1948(昭和23)年9月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,043 字 · 21 页

青空文庫

よ、なア」

「イヤ、この男は悪気がないんです。一風変っているだけで、なんしろ、心臓まで、右の胸についていて、ツムジが八ツもあって」

花田が口をいれて、とりなすと、

「オイ、よせよ、はずかしいよ、なア、オイ、とっても、残酷だよ」

顔をあからめて、必死に恨んでいる。

国際親善の大紳士も、直接応待の手段が見つからなかったようである。そこで、キッと、ひきしまると、

「気を附けえ!」

と、大喝一声。さて、気をつけの一同をジロリと見渡して、

「オレは一週に一度だけ、社へでる。オレの代りに、秘書のこれが、毎日、見廻りにくる。オレだと思え。この部屋の汚さ、暗さは、なんだ。居は心をうつす。明朗でなければ、ならんぞ。第一着手として、部屋の壁を、白く、明るく、塗りかえる。こゝだぞ。オレのやり方は、いつも、そうだ。文化も、国際親善も、この精神でなければならんぞ。貴様らも、オレのような第一人者たる国際民間使節の下に、文化国家建設の仕事に当る、最も、貴様らの光栄の至りであるぞ。よし、礼!」

そして、秘書をしたがえて、悠々と出て行った。

★

思いよらざることになった。