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カフェー

カフェー

勝本 清一郎

「共同通信社配信 第32〜33回」共同通信社、1964(昭和39)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,355 字 · 7 页

青空文庫

文学や美術とカフェーとの交渉の日本におけるいちばん古いところは、明治二十一年四月、東京下谷区上野西黒門町二番地、元御成道警察署南隣に可否茶館が初めてできたとき、硯友社のまだ若かった作家たちが出入りした話からである。この可否茶館が日本におけるカフェーの最初であるからこれより古いという交渉はない。江戸時代の水茶屋まで範囲に入れるとすれば司馬江漢の銅版画「両国橋」に両国河岸のよしず張りの水茶屋の情景、春信のにしき絵に笠森稲荷茶店の図、政信の墨刷りにしがらき茶店の図その他があり、春信の作品は後の邦枝完二の小説「おせん」や小村雲岱の版画の素材になっている。

しかし水茶屋の系統は別としよう。これに似たものはいまでもエジプトやトルコへゆくと、やはり道ばたの茶店のような構えで、柄のついたパイプ型真鍮製の小容器でコーヒーを濃く煮ている光景にぶつかるが、そういうコーヒーの飲みかたは日本に伝わらなかった。日本のコーヒー、コーヒー店も西欧系である。

硯友社の機関誌「我楽多文庫」の公刊第一号(明治二十一年五月)に「下谷西黒門町可否茶館告条」という石橋思案の一文が出ており、それに開業したばかりの可否茶館をさして「西洋御待合所」