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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
以来一読して見たが、成程、社長の気に入りそうなことばかり書いてある。英雄は元来素質が違っているという主張で、大衆を認めていない。大衆は単に薪だ。英雄という天の霊火が落ちて初めて燃え上る。全く十九世紀の思想だが、それ丈けに社長の共鳴が買えると思って、私は後刻、
「社長、お手空きでございますか?」
と進んで申入れた。
「よし/\」
と社長は中央の卓子へ出て来た。
「先刻の英雄論でございます」
「承わろう。松本君、君も来給え」
「はあ」
と松本君も側に侍した。
「社長」
「何だね?」
「これでは私が講釈を申上げるようで具合が悪いです」
と私は少し気が引けた。
「構わないよ。いつもの通り座談的にやるさ」
「はあ」
「始め給え」
「英雄というものについて、社長のお考えは如何でございましょうか?」
「さあ。君の考えから聞いて、間違っているところを直してやる。真理は結局一つしかないんだから」
「はあ。然ういうことに願います。お仕事を仰せつかって以来、参考の為め広く伝記書類を漁って大分学問を致しました。これは私の管見ですが、英雄というものは凡衆とは違うようでございます」
「それは当り前だ」
「素質そのものが違っています。