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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

「我輩は蝦蟇の主を見たことがある。蝦蟇の主と言っても分るまいが、我輩の家の池に素晴らしく大きな蝦蟇が一疋いる」

「はゝあ」

「手足を拡げると一尺に近い。あれは君達に見せたいものだ。去年引移ると間もなく、運転手の杉原が見つけ出したんだ」

「鳴きますか?」

「うむ。唸る」

「それじゃあれですな。この間の晩、編纂室でお待ちしている時聞えました」

「冗談言っちゃいけない」

「はあ?」

「あれは我輩が稽古をしていたんだ」

「はゝあ」

「ハッハヽヽ」

と松本君が笑い出した。

「いや。確かに社長のお声じゃございませんでした」

と私は執成しに努めた。

「いつだったい?」

「二三日前の晩でした。雨が降っていました」

「それじゃ矢っ張りガマどんかも知れない。彼奴は顔まで我輩に似ているんだから」

「…………」

「杉原の奴、あれを見つけて注進に来た時、笑ったの何のって」

「ハッハヽヽ」

「ガマどんという名をつけた」

「…………」

「そのガマどんの話だがね。近所の評判によると、あれはあの池の主で、あすこに五十年からいるそうだ。あゝいうものは何年生きるか知らないが、大きさから察しても余程の御老体らしい。しかし矍鑠たるものだ。