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ガラマサどん

ガラマサどん

佐々木 邦

「キング」1930(昭和5)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页

青空文庫

生きた材料

我輩も一つ毎日コーヒ湯の飲める身分になってやろうと発憤して勇猛心を起したのさ」

「はゝあ」

「しかしコーヒ湯はナカ/\飲めん。これは迚も駄目かとさえ思った」

と社長は又コーヒの中へ葉巻の灰を落した。

生きた材料

或朝、出勤の電車の込み合いの中で、

「熊野さん」

と私を呼んだものがあった。振り返って見ると、販売課の柳下君だった。

「何うぞ」

と会釈して席を譲ろうとしている。

「宜いですよ」

「いけません。何うぞ」

「もう直ぐですから」

「いや。あなたは年長者です」

「それでは」

と私はお言葉に甘えた。柳下君は私より若いけれど、会社ではズッと故参だ。つい先頃までは、同じ電車に乗り合せても、平気で新聞を読んでいたのである。

「何うですか? お忙しいでしょう?」

と柳下君は私に代って吊革に下りながら訊いた。

「掛け持ちで、天手古舞いです」

「しかしそれ丈のことがおありでしょうから、結構ですよ」

「何あに、叱られるのが儲けぐらいのものです。松本君も始終こぼしています」

「松本さんと同じ仕事をなさるんですか?」

「はあ。無論僕は手伝いですが、家へまで引っ張られるんですから、僕の方が本当のプライベイト・シクレタリーかも知れません」