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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
と松本さんは明答を避けた。これがこの人の好いところだ。
「あゝいう人間は将来見込がない」
「しかし好き/″\で仕方がないでしょう」
「それにしてもさ」
「はあ」
「社長の寺子屋時代はお幾つ頃でしたか?」
と私は又気を利かした。
「八つから入ったように覚えている。明治三、四年だったろう」
「はゝあ」
「お師匠さんはナカ/\厳しかった。我輩は腕白もので叱られ通しさ。しかし胸は敏かった。お師匠さんも『太田原は名詮自性、宗郷じゃの』と頭は認めていてくれた」
「栴檀は二葉より香しかったんですな」
「何あに、十で神童の組さ。到頭こんな馬鹿ものになってしまった」
「何う致しまして」
「ハッハヽヽヽ」
「図抜ける人は矢張り子供の時から違いますよ」
「僕なんか子供の時だって今だって褒められたことはありません」
と松本さんは厭味を言った。
「兎に角、目から鼻に抜けるような子だった。何処へ行っても、太田原の宗郷さんは胸が敏いという評判さ。当時は頭ってことは言わなかった。頭は頭痛の道具とでも思っていたのだろうか?」
「さあ」
「頭の悪いことを胸が疎いと言ったものだ。胸に手を当てゝ考えるとか、腑に落ちないとか、肚だとか度胸だとか胆力だとか、頭の働きを胴中でやっていたんだね」