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ガラマサどん
ガラマサどん
佐々木 邦
「キング」1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 99,079 字 · 202 页
尤もそれまでに巡査との押問答で、満更無教育ものでないことが分ったのだろう」
「漸く安心致しました」
「ところが松本老人は無筆だ。受取証が書けない。『お若いの、何も縁だ。君、書いてくれ給え』と頼んだから、我輩が書いてやった。印丈けは首にかけて持っていたから、こゝへ何うぞと言ったら、『こゝか?』と見当をつけて、スポンと掛け声をして捺した。皆笑ったぜ」
「ハッハヽヽ」
「老人は我輩にお礼をくれると言ったが、我輩が辞退したら、兎に角その辺まで来てくれと我輩の腕を捉えて放さない。相撲のように太った人で、力がある。警察を出ると、人力を呼んで、立派な料理屋へ乗りつけた。そこで又お礼を押しつける。我輩が拒絶する。『金は取らなくても、実に能く食うね。君は腹がへっているんだろう?』と老人が訊いた。『はあ。二日ばかり食いませんから』と我輩は正直なところを答えた。『食うに困るなら、俺の家へ来ないか? 何も縁だ。君一人ぐらい何うにでもする』と老人は何処までも親切だった。これには我輩二つ返辞さ。そのまゝ松本さんのところへ引き取られて、請負人の手代になった」
「社長、今日のお話は一々材料になります」