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『キング』でとくをするのはだれか

『キング』で得をするのは誰か

宮本 百合子

「文学新聞」日本プロレタリア作家同盟機関紙、1933(昭和8)年2月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,567 字 · 4 页

青空文庫

『キング』は労働者の家庭にも農村にも入るのだが今日の軍事経済政策による深刻な生活難で、どこの誰の爺さんと孫が実際こんなにヌクヌク安楽な目をして暮らしているか? 欠食児童なんか聞いたこともない。稼ぎてを戦争へ引っぱり出されたので、生きる手段を失い首をくくって死んだ七十の爺さんなんか一人もいない日本だと云いたげな、絵そらごとだ。

資本家地主の専制的な権力をよりあってかためている軍人華族ブルジョア反動教育家などの写真を何枚も見せられ、外国人の写真が出たから何かと見ると下に「人生の快事」と題して「人生にすべての苦難がなくなったときの索漠たる物寂しさを想像して見よ」この世は辛いのでいいのだという金言みたいなのがのっている。

実にブルジョア地主が、好きで繰返す言葉だ。頁をくって見ると、『キング』の至るところにこの種類の金言がはめこまれている。「老いて楽をしようと思えば若いうち蟻のように働け」「圧しつけられてこそ味の出る沢庵」と、搾取と闘おうとするわれわれの当然の意気組みをそらすような一番始末にいけない「諦め」でフぬけとなるよう、塩梅しているところは巧なものである。