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クリティシズムとにんしきろんとのかんけい

クリティシズムと認識論との関係

戸坂 潤

「学芸」1938(昭和13)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,091 字 · 50 页

青空文庫

芸術家自身がそういうことを理解していなくても、批評家の方は技術相互の関係を出来るだけ一般的な形へと追求しなければならぬ。所謂技術批評はそういう探究を含まなくては真の技術批評の名に値いするとは思えない。元来技術批評なるものは、フンダンに事々に、芸術に於ける技術とは何か、という根本問題に逢着している筈である。批評家が作品の技術的成功不成功を説得的に且つ割合一義的に評価し得るためには、芸術家自身が無意識に駆使している技術の秘密を、或る意味で分析し得なければならぬ。芸術の技術は言葉の通り一つの手先きの獲得物だが、その獲得物の例えば力学や物理学其の他という手法そのもののメカニズムは、自覚されていない。印象派の絵画手法がすでに光線と色彩との自覚的な研究の結果であるとしても、この事情に変りはない。技術は作者にとってこの意味に於ける一個の飛躍であり、因果的説明を抜きにしているという意味では象徴的なものである。それは所与としては秘義である。工芸技術などの奥義には、自分では知っていても他人には故意に隠蔽する場合もあるが(正宗の名刀の秘密の一つはモリブデンが這入っていることだとかいう)、作者自身が物理的操作を知っている限り、隠しごとの意味では秘密ではあっても、必ずしも今の場合の秘密を指さない。