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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
犯人と思われるあの男に、まだ一言半句の訊問もしてないという帆村の言葉に、私は驚いてしまった。
「じゃ今まで君は、一体何をしていたのかネ」
「金の部屋について調べていたのだ」
「そして何を掴んだのかい」
「いろいろと面白いものを掴んだ。しかし短刀をもった男を犯人と決めるに十分な証拠はまだ集まらない」
「というと、どんなものを」
帆村は嚥みこんだ煙を、喉の奥でコロコロまわしているようだったが、やがて細い煙の糸にして静かに口から吐きだした。それは彼が何か解き難い謎を発見し、解く前の楽しさに酔っているような場合に限って、必ずやって見せる一つの芸当だった。
「あの部屋で面白いことを見つけたがネ」と帆村はボツボツ語りだした。「それはゴールデン・バットについてなのだ。君はあすこの床の上に、バットがバラバラ滾れているのに気がつかなかったかい」
「そういえば、五六本、転がっているようだネ」
「五六本じゃないよ。本当は皆で三十二本もあるんだ。といってこれが、五十本も入るシガレット・ケースから転げ出したのじゃないのだよ。そんなケースなんて一つもあの部屋には無いのだ。あるのはバットの、あのお馴染の空箱だけだった。