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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

「さあそれは、まず出来ないと思うネ。その女が気が変にでもなって、馬鹿力というのを出すのでも無ければネ」

「気が変に? 気が変だとすれば、あの場をあんなに巧みに逃げられるだろうか」

「ないこともないぞ」と私は負けるのが厭であるから叫んだ。「こういう場合だ、気が変になった女が、金に重傷を負わした。途端に癒ったとすると……」

「もう止そう。はッはッはッ」と、帆村は呆れ顔に笑い出した。

「帆村君、ちょっと来て下さらんか」

室の外から、大江山捜査課長の呼ぶ声がした。どうやら隣りの調べも片がついたものらしかった。

4

金青年殺害事件は案外呆気なく処理されてしまった。官辺では、帆村が捕縛した例の男を犯人として判定してしまった。

ここに意外だったことは、あの犯人という男が、海原力三その人だったことだ。私もあの後、係官の前へ彼が引張りだされたとき初めてそれと気が付いて駭いてしまったわけだった。

海原力三は最初のうちは猛烈に頑張って、犯人でないと云い張った。しかし後に至って遂に係官の指摘したとおり、一切の犯行を認めたということであった。

犯行の動機は、カフェ・ゴールデン・バットで金のために女を奪われたことを極度に憤慨したためだった。