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ザザむしのつくだに
ザザ虫の佃煮
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,267 字 · 5 页
いまでも釣りするたびに、子供のときのような心になって、喜びたいとねがうのである。
川虫も、山女魚やはやを釣るには、なくてはならぬ餌である。川虫には、平たい草鞋のような形をしたのもあれば、百足のような姿をしたのもある。また挟み虫のようで、黄色いのもある。これは、いずれもかげろうの幼虫であろう。
なかでも、挟み虫のような形で、黄色い川虫を山女魚やはやが好むようである。わが故郷では、これをチョロ虫と呼んでいる。
昨年の春であったか、信州の諏訪に住んでいる正木不如丘博士に会ったとき、釣りの話のことから、このチョロ虫の身の上談に及んだことがある。博士がいうに、その虫ならば自分のくにの川にも、いくらも棲んでいる。そして、それを信州ではザザ虫と呼んでいるのだ。このザザ虫は、魚の餌になるばかりでなく、人間の餌にもなるのだから、妙だ。
信州では、ザザ虫を佃煮にこしらえて、それを肴にすると、酒がひどくおいしいといって甚だ賞味する。君も酒が好きだから、こんど上京するとき持って行ってやろう、ザザ虫の佃煮を肴にして、一杯やり給えと、甚だ悪もの食いめいたことをすすめるのだ。