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ジイドとそのソヴェトりょこうき
ジイドとそのソヴェト旅行記
宮本 百合子
「文芸春秋」1937(昭和12)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,615 字 · 19 页
一九一二年頃から、陪審員としてルアンの重罪裁判に列席するようになり、ジイドの人間の行動、心理の推移に対する関心は、次第に自分の内部省察から、そとの人々の方に向けられて来た。一九二五年のコンゴへの旅行は、資本主義国における植民地経営の裏面の罪悪をジイドの面前にひろげて見せた。ジイドは、この時ゴム栽培特許権所有者組合の横暴と一年間闘い、商務大臣の偽の誓約に憤った。「人間こそ先ず建直されねばならぬ」だがそれはどんな道によってであろうか。ジイドの考えによれば「人の最も個性的な状態にいることは、なによりも優れた公益をはかっていることになるのだ」が、資本主義ヨーロッパの社会的現実は、果して、人間を個性的に、真の自分たらしめ得ているであろうか。ジイドが目撃する古い社会には「甲殼類」が充満している。彼等は、ジイドが死よりも嫌う同化主義者、保守主義者、生涯に只の一遍も人間の為に献身しようとしなかったために傷つきもしなかった、無疵のままの利己主義者である。社会の枠がこのままであって、猶且つ人間が建直されるということはあり得るであろうか。極めて自然なこの疑問が遂にジイドの目をソヴェト同盟へ向かわしめた。