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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
ない。患者の評判がよろしいから、衣子も大切にする。岩本の申込みもていよくあしらい、気をそらさぬように努めているうちに、今度の縁談であるから、岩本が持ち前の強情で、対抗的に談判を開始する。あらたに聟たるべき人物は、婦人科の医者であるから、自分の地位にも関係する問題であった。
この岩本を美代子はかねがね最も嫌っていたのであったが、大浦種則の縁談が起る、そして私が一肌ぬぎましょう、とこうでると、実は私、岩本さんが好きなのよ、と言いだした。これ実に、私という存在に対する無意識の軽蔑の如きものであり、巧まざる嘲弄、もしも私以外の然るべき人物が一肌ぬぎましょう、と持ちかけたら、こんな軽ハズミなことは言わなかったに相違ない。
「おや/\美代子さん、それは本当ですか。そんな言葉を、私がそっくり岩本先生にお取次する、そのとき、岩本先生が、例の猪の如き早のみこみをもって、得たりとばかり、あなたをさらってお嫁にしてしまう。悲鳴をあげても、あの猪の先生にかゝっては、もう、手おくれですよ」
と、眼にやさしい笑みをこめて睨んであげる。美代子はクスリと笑って、返事をしない。
こうして見直すと、成熟しかけたジロリの娘、親の顔にやゝふくらみを持たせ、目は細からずパッチリしているが、やっぱり全体どことなく薄く、白々と、父親の酷薄な気性をうけ