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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
醜悪なるものゝ最も醜悪なるものである。
私は口惜しさ、泣くにも泣かれぬ。
この恨みは、必ず、はらす。私は、誓った。見事、美代子をパンパンにおとしてみせる。パンパンの如くに、私が美代子を弄んでみせる。
その二日あと、美代子を見舞ったヤス子が、衣子にことづかったからと云って、ハンケチに包んだ私の入れ歯を持ってきた。
衣子の憎しみと嘲弄がそこにこもっているのである。私はヤス子に羞しかった。
「ねえ、ヤス子さん、人の怒りというものは、すさまじいものですよ。私は怒りましたよ。そして、喚きましたよ。然し、ですよ。喚いたと云ったって、歌唄いほどデッカク声をはりあげるわけじゃなし、ちょッとばかり声高になったというだけで、別に飛び上りもしなけりゃ、腕をふりまわしもしないのです。それでいて、どうですか。喚くうちに、私は入れ歯を吹きとばしたのです。喚き声のでるのと一しょに、とびだして、なくなったのですよ。嘘のようだが、本当なのですから、不思議ではありませんか。人の怒りというものは、つまり、気魄というようなものに、何か電気の動力みたいな運動力があるんじゃないかな」
ヤス子の顔に、あたゝかい笑いがこもった。