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ちっぽけなおの

チッポケな斧

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第八号」1951(昭和26)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,233 字 · 21 页

青空文庫

金瓶梅が真の大文学だというような声はあんまりきかなかった。人性も割合によく描かれていて単に好色読物というべきではなく、一応の文学でもある、という一部の説は昔から日本にもあった。それにくらべると、戦前に伏字だらけのチャタレイが出版された時には、第一級の新文学、新しいモラル追求の大文学などと大きなセンセーションを起したものだ。私も若干の敬意を表して短い文章を書いたのは覚えているが、戦後に短文を集めて随筆評論集をだすとき、ずいぶん探したが、これをのせた雑誌が手にはいらなかった。しかし、チャタレイが主ではないが、チャタレイにふれた文章はいくつかある筈である。いまの中堅作家で過去にチャタレイにふれた文章を書かなかった人は殆ど居ないだろうと思う。概ね讃辞であったはずで、中にそうでない者があっても、今日の中堅作家がチャタレイを一度は自分の文学上の問題にとりあげずにいられなかったのが事実である。私は、文壇の時流的な読物には甚だ無関心に、自分勝手の偏した書物を読んでいるのが普通であったが、それでもチャタレイはかなり熱心に読みもしたし、論じもした。新しい飜訳文学としては、昭和時代に最もよまれ、影響を与えたうちの定評ある一作品であろう。