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ちっぽけなおの
チッポケな斧
「新潮 第四八巻第八号」1951(昭和26)年7月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,233 字 · 21 页
チャタレイ文学の思想とか芸術性は問題ではなく、ワイセツの部分だけが問題で、そしてそれが水準以下の一般大衆に与える影響だけが問題であると称して、文学や芸術の高度の目的を完全に無視し、踏みにじっているのである。
日々の新聞は良俗と相容れぬ犯罪で賑わっているかも知れぬが、調停裁判だの心中だの情痴事件だのという新聞には現れぬようなところで、良俗と称するもののワク内で、または良俗と称するものの不合理からと思われる多くの事件が起っている。情痴殺人などという新聞を賑わす問題でも、情痴は良俗に反する側に附せられた習慣的な悪名であるが、一皮むいて良俗の側の合理性を疑ってみることはできないであろうか。
文学というものは主として良俗を疑う側で、よりよき生活、より正しい生き方はないかということを目指すものである。
国法は常識を代表するものだ。検事は良俗の番犬であるのが平時の任務かも知れないが、六法全書をひねくるだけの職業的な立場とは別に、個人としては国法や良俗の不備不合理を痛感する理想ぐらいは有ってもよかろう。より良きもの、より良き生き方をもとめるのは誠意ある人間の当然であろう。