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トコヨゴヨミ

トコヨゴヨミ

田山 花袋

「早稲田文学」1914(大正3)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,449 字 · 38 页

青空文庫

何も官憲などを恐れている必要はないんだ。独立独行だ!」さも大きな独創的な考を得たように、膝を叩いて勇吉は跳り上って喜んだ。それは広く四辺が見渡されるような処であった。向うには山毛欅の森や白樺の林が広く遠く連っていた。此処等あたりまでは、開墾者もまだ入って来ないと見えて、低い灌木の野や、笹原や、林の中に、路が唯一筋細くついているばかりで、あたりには百姓の姿も見えなかった。夏の日が明るく心持好くかれの腰をかけている草地を照した。

「そうだ、そうだ。それに限る!」

かれはまた絶叫した。そしてまた新しいことに気が附いたというように、早く鉛筆を紙の上に動かして計算をした。

これに限らず、勇吉は草の上に寝ころんで休むことがすきだった。上には空と日の光があるばかりだ。何んな大きな声を出しても誰も何とも言うものもない。其処にはかれのあとをつけねらっている刑事もなければ、かれに向ってガミガミ言う力の強い妻もいない。心を絶えずイライラさせる子供の啼声もしない。何をしようが勝手である。そこでのみかれは自由に呼吸をつくことが出来るような気がした。「空と日と鳥と……何という自由なひろい天地だろう。