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ドミノのおつげ

ドミノのお告げ

久坂 葉子

「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页

青空文庫

遺産のこと。勿論遺産と言っても、今住んでいる土地家屋と菩提寺の他は何もありません。そんな話が随分長くつづきました。あれこれ小さい道具を買いととのえることだけでも意外に多くのお金を使わねばなりませんし、葬儀の費用は、とにかく、知合先や、会社関係より借用することにして予算をたてたりしました。私は、ふと松川さんのお祖母さんの葬儀の時を思い出しました。父には金歯が四五本もあるのです。あの話の時の父の苦い顔を思い出しました。金歯のことは黙っておりました。御通夜の人達より離れて部屋に戻ると、私は信二郎に頼まれた、欠席届を書くことに気付いて、硯箱をあけました。墨をすりながら、私は小学生の頃父に呼びつけられて硯の墨すりをさせられたことを思い出しました。たくさんの墨水をつくります。お皿にあけてはすり、あけてはすりました。そうです。松の絵にこっておられた時でした。最近は小さい淡彩の絵ばかりでした。

死の一日おいて翌日――

それはその季節になってはじめてのよく晴れた静かな午後でした。父はお骨となりました。東さんの好意で、売れていなかった白磁の壺を葬儀の日だけ借りて来て、それを位牌の前に置きました。