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パァル・バックのさくふうそのた
パァル・バックの作風その他
宮本 百合子
「婦人文芸」1937(昭和12)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,395 字 · 9 页
或はまた、もっと複雑な何かがあるのではないかと。正宗さんの批評では、客観的態度というものを、作者が描こうとしている現実対象に心をとらわれていず、そこから自分の心をひきはなして、現実の悲喜の彼方に自分を置いた作者がその距離から悲喜をかく態度として云われていると思う。だが、バックの現実に対する態度は果してそうであろうか。
バックは、主観にとらわれたり、いきり立ったりしない筆致で描いているけれども、例えば女奴隷である阿蘭が王龍の妻にもらわれて僅の荷物を腕にかけて行くところ。その路々王龍が青い桃を阿蘭にやり、歩きながら阿蘭がそれをかじってゆくところ、赤い辻堂の場面、更に子供のために布を買う阿蘭の姿など、作者の女としての同感、同情、思いやりというものが惻々と底にながれ、感傷をおさえた描写の中に脈うっている。バックの短い伝記で見ると、彼女は中国で生れているのであるから、中国の庶民生活はよく知っているであろう。ただ、よく知っている、その細部を描写しているというだけでない暖かさが阿蘭を描くバックの筆致にこもっている。そこには何か女であって初めて実感となって作者の感情の内容となっていると感じられるものが流動しているのである。