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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

煙のあとの森も屋根も、市街はしっとりと露を打って、みはらしの樹の間の人影は、毛氈とともに仄暗い。

いま振袖の指した、丘の一つが白かった。

「図々しいじゃあないの、(狐、さあ、夥間づきあいに一つ酌をしてくれ。本来は、ここのこの塚は、白い幽霊の出る処だ。)親仁様、まだ驚かすつもりでいるのかしら。」

「何、白い幽霊?」

と、聞き返すがごとくにして、衝と膝を折って屈めた。

「紅い鳥冠の鶏の――と云うのかね。」

「いいえ、それはそれは美しい婦の方の。」

「………………」

「そして、白いのはお衣ものも、ですけど、降り積る雪なんですって。」

「その天狗が話したのかね。」

「ちびりちびりとウイスをのみながらだから。……いい加減お察しなさいよ。……こっちの木の葉より、羽団扇の毛でもちっとは増だろうと思うから、お酌をしますとね、(聞け――娘。)と今度はお酌のお庇で、狐が娘になったんですがね。……そのかわり、羽団扇の方も怪しくなったの。でも、お話がお話だから、つい聞いたんですわ。

九州の河童の九千坊とかではありませんけれど、この土地には、――御覧なさい、お城の奥の野の果の黒い山に、八千坊といって、むかし、数知れず、国一杯に荒廻った天狗様を祀り籠めた処があるんですって。