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ピストルのつかいかた

ピストルの使い方

泉 鏡花

――(前題――楊弓)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,100 字 · 78 页

青空文庫

緋葉もなお濃い。……不思議なもののような気がする。ただの白い饅頭では断じてない。はてな。」

と、のばして触れようとした手を、膝に拳して、固くなって控えた。

「天狗が気になる。うっかり触ると消えはしないか。」

「消えれば口の中ですわ。……祝儀をくれない天狗なんか。」

姉さん、ここはばらがきで、

「私にやろう……と云ったんですもの。ほんとうの天狗の雛ッ子だって。」

また奇妙に、片袖をポンと肩に掛けて、多津吉の眉の前へ、白い腕を露呈に、衝とかがみ腰に手を伸ばして、ばさりと巣を探る悪戯のように――指を伏せても埒あく処を――両手に一つずつ饅頭を、しかし活もののごとくふわりと軽く取った。

立直った時である。

「あらあら火事が。」

多津吉もすっくと身を起した。

「また火事か!――いや、火事じゃない。あれは、あすこに、大きな坊さんの銅像がある。それに夕日が当るんだよ。」

月の御堂のあとという、一むらの樹立、しかも次第高なれば、その梢にかくれたのが、もみじを掛けた袈裟ならず、緋の法衣のごとくと立った。

水平線上は一脈金色である。朱に溶けたその波を、火の鳥のように直線に飛んで、真面に銅像を射たのであった。