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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页
もったいない話だ。では、半分僕に貸してやろうという話が、どんなきっかけから起ったのか、僕はもうほとんど覚えていません。どちらから言い出したのか、それも忘れてしまった。しかし僕は当時八王子の親爺の家に住んでいたのですが、東京には遠いし、また八王子の家は手狭で画を描くにも不便だし、いずれは東京で部屋を借りて独立しようという気持はあったのです。この家の八畳の板の間なら、アトリエとして充分に使える。それに不破もおっとりした柔和な性格だし、夫人も無愛想ではあるが意地悪なひとではないらしい。万事好都合なわけですから、たちまち話はまとまりました。
「ほんとに君に来てもらうと、用心にもなるし、僕らもたすかるよ」
不破は機嫌よく笑いながら、そんなことを言ったりしました。僕が東側の四畳半に住み、不破夫妻は西側に住む。板の間は両方の共同にする。そういう条件でした。
「それで――」と僕は最後に訊ねました。「間代の方はいかほどですか」
「うん。月に五百円もいただくか」
と不破は無雑作に言いました。金のことなど問題でないという風な言い方でした。
「では、権利金は?」
「うん」不破は面倒くさそうに顎のあたりをがしがし掻きました。