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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
梅崎春生『ボロ家の春秋』。同一底本的分册已合并为一书。收入:ボロ家の春秋、Sの背中、黄色い日日、記憶、蜆、庭の眺め、凡人凡語。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,411 字 · 263 页
そこで一段土地が低くなって、そこから古畑家の庭。古畑大八郎が向うむきに立っている。背丈は五尺七寸位。ただしここから見えるのは、その上半身だけ。ネギさんの姿は見えない。また眼をもとに戻して、うちの庭の地面は、一尺ほどの高さの雑草ばかり。名はほとんど知らない。小さな花をつけてるのもいる。草の背丈にかくされて、畠のウネは見えない。樹々の中では、モミジの葉がいちばん綺麗だ。もう半分ばかり紅葉している。かつてカスミ網が張ってあったのは、この樹の根元である。ここからは見えないが、今は赤松か何かの腐木が横たわっている筈だ。いずれあれから椎茸が生えて来るだろう。ネギさんが向うの庭から手を伸ばして、その腐木に何か細工しているのを、何時かチラと見たことがあるから。きっとあれは、新聞広告などによく出ている、椎茸の素人栽培のやり方なのであろう。もし椎茸が見事に生えてきたら、私はどうするか。食べてみるか食べないかは、その時にならねば判らない。眺めてみて、食慾を感じたら食べるし、そうでなければ、止しにする。しかしそれを今から、予想するのは厭なことだ。予想にしばられるのが面白くない。