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マクシム・ゴーリキイのひとおよびげいじゅつ
マクシム・ゴーリキイの人及び芸術
宮本 百合子
「婦人公論」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,075 字 · 30 页
その頃ゴーリキイはもちろん、労働者とインテリゲンツィアの対立を政治的に利用するために、どんな金を政府が撒いているかなどということは洞察しなかった。ゴーリキイは、その中でパン焼職工の連中に折を見てはもっと楽な、もっと意義ある生活の可能について啓蒙的な話をするのであった。このパン焼工場での生活の断面は「二十六人と一人」という名篇につよい筆致をもって描かれている。
二十歳の時、ゴーリキイは自殺をしかけた。一八八七年の十二月のことである。ゴーリキイは市場で四つ弾丸のつまったピストルを買い、凍ったヴォルガ河の雪深い夜の崖にのぼって胸を撃った。弾丸ははずれた。彼はこの事件がすむと同時に、この経験を深く批判して、恥しく感じた。
新しくよみがえった生活に対する真率な積極性によってゴーリキイは春になるとロマーシという「人民主義」の革命家と一緒に或る農村に入り、農民の自覚を促すための運動を始めた。その土地の富農たちの恐ろしい悪計によって、革命的であった農民イゾートはヴォルガ河のボートの中で頭をわられて殺され、ゴーリキイたちの店は放火され、そのどさくさにゴーリキイやロマーシももうすこしのところで殺されかけた。