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マクシム・ゴーリキイのでんき

マクシム・ゴーリキイの伝記

宮本 百合子

幼年時代・少年時代・青年時代

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,543 字 · 120 页

青空文庫

ロマーシは、手はじめにクラスノヴィードヴォの村にこれまでからある二軒の店よりやすく品物を売ることにした。

ロマーシは、ゴーリキイがデレンコフの店で知り合っていたナロードニキの人々とは民衆に対して異った考えを持っているのであった。

「あすこの君達のところじゃ、学生達が民衆への愛についていろいろ喋っている。俺はそれについて云いたい。愛する――というのは、妥協し、寛容し、黙認し、許すことだ。が、民衆の無知を黙認し、その迷妄と妥協し、そのすべての卑屈さを寛容し、その野獣性を許すことが出来るかね? ニェクラーソフに溺れていたんじゃ何一つ出来ない。百姓は教えられなければいけない――お前が殴られないように生活することを学べってね」

ロマーシの蔵書には科学的なものが多かった。彼はチェルニゴフの鍛冶屋の息子であった。キエフ駅の油差しとして労働しているうちに運動に入り、労働者の研究会を組織した。捕縛されて二年の牢獄生活の後、シベリアのヤクーツクに流刑された。十年間そこに暮した。革命的学生として同じ頃流刑されていたコロレンコを知っていた。

苦しい動揺の後、自分にとって余り誇りとならない事件の後のゴーリキイにとって、このロマーシの着実な、人間的な処理ぶりは非常にためになった。