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マーカス・ショーとレビューしききょういく
マーカス・ショーとレビュー式教育
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,879 字 · 18 页
単に普通教育、中等教育の内容全体がそうであるのみならず、その中のある一つの科目の教科書がまたそれぞれにレビュー式である。読本をあけて見る。ありとあらゆる作者のあらゆる文体の見本が百貨店の飾棚のごとく並べられてある。今の生徒は『徒然草』や『大鏡』などをぶっ通しに読まされた時代の「こく」のある退屈さを知らない代りに、頭に沁みる何物も得られないかもしれない。
自分等が商売がら何よりも眼につくのは物理学の中等教科書の内容である。限られた紙幅の中に規定されただけの項目を盛り込まなければならないという必要からではあろうが、実にごたごたとよく色々のことが鮨詰になっている。一頁の中に三つも四つもの器械の絵があったりする。見ただけで頭がくらくらしそうである。そうしてそれらの挿図の説明はというとほとんど空っぽである。全く挿図のレビューである。そのうちの一つだけにして他は割愛して、その代りその一つをもう少し詳しく分かるように説明した方が本当の「物理」を教えるためには有効でありそうに思われる。それからまた、近頃の教科書には本文とは大した関係のない併し見た眼に綺麗なような色々の図版を入れることが流行るようである。