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モノグラム

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江戸川 乱歩

「新小説」春陽堂、1926(大正15)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,034 字 · 22 页

青空文庫

というのは、いつかもお話ししました通り、私は学校にいた時分は、これでなかなか交際家でして、女の友達などもいくらかあったのですが、北川すみ子というのはその内の一人で、特別に私の記憶に残っている女性なのです。××女学校に通っていましたがね。美しい人で、我々の仲間の歌留多会なんかでは、いつでも第一の人気者、というよりはクィーンですね、美人な代りにはどことなく険があり、こう近寄り難い感じの女でした。その女にね(栗原さんは一寸云い渋って、頭をかくのです)実は私は惚れていたのですよ。しかもそれが、恥しながら片思いという訳なんです。そして、私が結婚したのは、やっぱり同じ女学校を出た、仲間では第二流の美人、イヤ今じゃ美人どころか、手におえないヒステリィ患者ですが、当時はまあまあ十人並だった御承知のお園なんです。手頃な所で我慢しちまった訳ですね。つまり、北川すみ子という女は、私の昔の恋人であり、家内にとっては学校友達であったのです。

併しそのすみ子を、三重県人の田中がどうして知っていたか、又それだからといって、何故私の顔を見覚えていたか、どうも腑に落ちないのですね。